シナリオの「雰囲気」の重要性とその選定法

シナリオの「雰囲気」の重要性とその選定法1
定義とその分類

GMになろう Advent Calendar 2015

 この記事は、TRPG:GMになろう Advent Calendar 2015の第4日目の記事として書かれました。
 http://www.adventar.org/calendars/765

自己紹介

 皆様、こんにちわ。
 この度、私のGMノウハウをここで書く機会を頂きまして、ご紹介頂きましたライアーノーズさんには深く感謝を申し上げます。

 私の、これまでのTRPG経歴特にGMノウハウについて語るということで、GM経歴について述べますと、(まあGMではなくDMですが)Dungeons and Dragons 4th、および、Pathfinder RPGが大部分をしめており、他は数回メックウォーリアー、エクリプスフェイズ、d20 modern等のSFゲームのGMも行いました。
 そのため、私のDM……いやGMノウハウの多くはファンタジー系のゲームからきています。
 また、シノビガミに代表されるPC間の人間関係を主軸とするゲームはプレイヤーとしての参加も含めてほぼ経験がないため、そういった方向でのコメントはできませんが、そのあたりはご容赦願いたく思います。

 さて、今回、私は「シナリオの『雰囲気』の重要性とその選定法」というタイトルでGMノウハウについて、発表したいと思います。私はこの『雰囲気』というものが、TRPG、あるいは言い方をかえると「システム化されたごっこ遊び」において、非常に重要な要素だと考えているからです。

「雰囲気」とその重要性

 はじめに「雰囲気」の定義についてですが、今回の発表において、「雰囲気」とは、「ゲーム性そのものには直接かかわらないが、そのゲームのシステム部を人間が理解するため、あるいはゲームとして楽しむための解釈」と定義します。

 例えば、敵/味方に分かれて、駒を移動させて相手を排除する、というゲームに「駒の名前(「王様」「将軍」「歩兵」……)」と決めてやることで、二つの軍勢が戦争しているという「雰囲気」がうまれるわけです。
 さらに別の例ですと、「オセロ」は特に「雰囲気」がなく、ただ白と黒の駒がゲームシステムで定義された方法で、面積の広さを競っているだけのゲームです。特に何かを再現している、あるいは何らかの「雰囲気」があるわけではありません(これを卓上ゲーム用語で「アブストラクトゲーム」と呼ぶらしいです)。

 さて、例を将棋に戻すと、それぞれの駒ごとに、「ある回数『取られても』盤上に残る」というルールを付け加えるとします。この値に「菌コロニー数」という名前をつけてやると、ミクロな細菌の生存競争のような「雰囲気」を得ることができ、あるいは、もし、「装甲値」という名前をつけてやるとロボットや戦車といった機械同士が戦っているような「雰囲気」を得ることができます。もちろんそのまま「生命力」という名前をつければ、そのまま「軍勢が戦争している」という雰囲気をより強く補強させることができます。

 私は、TRPGはその「雰囲気」の積み重ねにより、ただサイコロを振り値を比較する(あるいは駒の座標をお互いに移動させる)行為を、RPに値する高級なごっこ遊びとして昇華させており、TRPGの楽しさは、ゲームシステムと「雰囲気」の融合からきていると考えています。

 そのため、この「雰囲気」をどのように選定するのか、そしてGMとして運用するのか、という点はTRPGを楽しむ上で、非常に重要です。

「雰囲気」の分類

 これまで述べてきたように、重要な「雰囲気」ですが、TPRGのゲーム構造で分類すると大きく3つ「ゲームシステムの雰囲気」「シナリオの雰囲気」「エンカウントの雰囲気」に分類することができます。

 これまで将棋等の例として述べてきたものは、「ゲームシステムとしての雰囲気」です。ファンタジー、SF、宇宙、サイバーパンク……色々あります。「シナリオの雰囲気」はシティアドベンチャー、ダンジョンもの、等々あり、「エンカウントの雰囲気」は、主に戦闘における敵やマップの種類だけではなく、近代的なRPGにおいてエンカウントと分類されることが多い交渉や技能チャレンジの組み合わせも含みます。
 これら其々の詳細、また選定法等々については第二回以降で説明していきたいと思います。

TRPGに関する講演会を聞いていたら、突然学園ものでTRPG部に所属していた世界に転生してしまった件

 とりあえず、学内で『とはねえ』はないでしょ、ちゃんと、とは先輩、あるいは、とは部長と呼びなさい。
 で、何?次回の新入生歓迎イベントでGMをやりたいの?おおっ、とうとうあんたもGMをやるようになったのね、お姉ちゃんは嬉しいよ。
 ふむふむ、何々「決められた雰囲気をちゃんと正しく守ることは分かった」と。

 いやー別に「決められた雰囲気」というのは存在しないのよ。たとえば、「ファンタジー世界だと思ってたら、実はSF世界でした」とか「メイドRPGだと思っていたらクトゥルフだった」とか「学会発表風だと思っていたら、日常系お薬風だった」とか、それはそれで刺激的だわ。
 問題なのは、GMとプレイヤーが意図している、あるいは想像している雰囲気が異なることで、それがゲーム進行を邪魔しちゃうのよ。
 単純な例だと、GMがダンジョンものだと思って徹夜して作ったシナリオが、プレイヤーがシティアドベンチャーだと思って、交渉とか情報収集とかしちゃうと、準備がすべて無駄になって、街のデータをでっちあげたり、ダンジョンに戻す誘導をしなくっちゃいけなかったり、大変なんだからね。というか大変だったんだからね。
 ほら、心当たりあるでしょ。私そういうのやられたことまだ覚えているんだからね、うらんでるよ。あなたもそういう目にあうがいいわ。
 まあ、とにかくお互いにそういうものだと認識していたら、雰囲気から外れていても何も問題ないわ。
 ま、私が「サクラPC」をやってあげるから、実際にやるならばちゃんと私も呼んでね。

次回予告

 次回は、具体的な雰囲気の例と選択のしかたについて説明したいと思います。
 ご清聴ありがとうございます。

 何か質問がありましたら宜しくお願い致します。