シナリオの「雰囲気」の重要性とその選定法

シナリオの「雰囲気」の重要性とその選定法2
どのように選択するべきか→どのような雰囲気があるのかの詳細

GMになろう Advent Calendar 2015

 この記事は、TRPG:GMになろう Advent Calendar 2015の第11日目の記事として書かれました。

 遅れてすいません……。

前回の復習

 前回の復習をしますと、雰囲気の定義とその重要性、そして、雰囲気は3種類「システムの雰囲気」「シナリオの雰囲気」「エンカウントの雰囲気」に分類されることを述べました。

 今回はGMをするにあたり、どのような雰囲気があるのか、について述べたいと思います。
 最初の章題には「どのように選択するべきか」と書きましたが、冷静に考えると、「シナリオどうするのか」と同義の意味であり内容が重すぎるので、「どのような雰囲気があるのか」について述べたいと思います。 これにより私が主張してきた「雰囲気」の重要性の具体例を理解してもらえると嬉しいです。

システムの雰囲気

 システムの雰囲気ですが、ファンタジー、SF、宇宙、サイバーパンク……等々、「ジャンル」あるいは「『これってどんなゲームなの?』『舞台はどこ』という質問の回答」に相当するものです。

 ある意味「どのゲームシステムをプレイするか」と大きく関わっており、これはこれで重要なのですが、実用上GMをするにあたり考慮する必要はあまりありません。自分の卓で良くプレイされているゲームなり、好きなジャンルのゲームなり、好きなもの、あるいは適しているものを選ぶのが良いでしょう(もしかしたら、誰かが「どのようにシステムを選択するべきか」というタイトルで記事を書いているかもしれません)。

 もちろん前回「とは部長」が述べていたように、「○○と見せかけて実は○○」というのも効果的であり、「ファンタジー世界と見せかけて実はSF」「ロボット戦闘と思いきや、実はゴジラ(あるいはネウロイ、BETA等々)的な良く分からない謎生物と戦う」等々色々考えられます。
 ただし、ここで注意しなくてはいけないのは、そのシステムで考慮されていないことはゲーム的には再現できない、ということです。もちろんロールプレイ的に解決できることは多々あるのですが、もしこのような変化球的なことを行う場合には、どのように解決するのかを決めなくてはいけません。
 多くの場合、そのシステム内部のシステムを流用することが多くなるかと思います。

 例を挙げるとD20 Modernというシステムがあります。これは、例えばアクション洋画のような、現代アクション物用のシステムなのですが、ファンタジー世界用のシステムであるDungeons and Dragonsのシステムを元に作成されています。そのため、「現代物と思いきや実は魔法があるファンタジーもの」「現代物と思いきやゾンビもの」等々、元のシステムを流用することにより、ファンタジー世界との相性はとても良いです(実際にそうした公式サプリも出版されています)。
 一方、もともと近接戦闘と魔法がメインのファンタジー世界のシステムが元なので、銃撃戦を中心とした現代ミリタリー物を D20 Modernを使用してプレイするのは、現代物用のシステムであるにも関わらずあまり向いていない、という欠点があります。また、当然戦闘に重点が置かれているため、現代でもミステリ物との食い合わせは悪い、という問題があります。
 もし、D20 Modernを使用して、銃撃戦が多めの雰囲気にするならば、魔法等のほかの戦闘に関するシステムを参考に銃撃戦のルールを追加する必要があり、他にも、現代ミステリの雰囲気で楽しむには(そして別システムでプレイする、ということができないならば)、結局技能チャレンジを繰り返すか、戦闘して勝つ=尋問で情報を得る、に置き換える、等の工夫が必要でしょう。

シナリオの雰囲気

 「シナリオの雰囲気」とはシティアドベンチャー、ダンジョンもの、ドラゴンボール的宝探し、シムシティ的国家経営、ある拠点を中心とした探索、特定の目的地に向けた冒険、防衛戦、といったように、プレイヤーがどのようにシナリオで提示された問題、課題に対する解決法の雰囲気です。
 これはどのようにシナリオでプレイするのか、シナリオを作るのか、という点と大きく関わっています。
 実用上GMとしては「このシナリオの雰囲気をどのようにプレイヤーに伝えるのか」という点が非常に重要です。例えば、「ダンジョンハックとして準備していたのに、プレイヤーがシティアドベンチャー的解決方法を模索しはじめた」、「防衛戦シナリオなのに、敵への攻勢を意図し始めた」等々、GMはアドリブででっち上げるか、元の路線に修正するかの決断を迫られます。
 アドリブ手法については他の方が述べますし(と思う)、「どのように伝えるのか」は第三回で述べたいと思います。

 また、多くの場合、それ相応に複雑なシナリオでこのような問題は発生しやすいです。
 例としては、
 「ある場所への潜入シナリオがあり、ダンジョンハック的解決を予想していたが、結局シティアドベンチャー的解決をされてしまった(SWAT的解決ではなく、Spy的解決だった!)」
 「ある課題があり、PC達は善なる目的のために依頼者から、それを受ける。その課題の最後にはボスが待っていたが、ボスと協議した結果、課題解決のためには依頼者を倒すことが効率が良いという結論に至り、結局依頼者を倒す」
 「依頼者がPC達にとある課題解決を頼んだ。最終的に依頼者は裏切るシナリオ……だったが、途中でPC達がそれを予想しPC間で議論た際に、論理的に考えて依頼者が裏切るメリットが無いという結論に至り、GMもそれに納得してしまう。結局裏切らないで強引に終わらせた」
 とにかくシナリオ崩壊の第一原因となりやすいので、注意しましょう。

エンカウントの雰囲気

 「エンカウントの雰囲気」は、主に戦闘における敵やマップの種類の描写を示しています。が、戦闘だけではなく、特に近代的なRPGに多いエンカウントと分類されることが多い交渉や技能チャレンジの組み合わせも含みます。
 単純な例ですと「氷山の中のダンジョンに突入。出てくる敵は白熊等の寒冷地の生物が多い中、突然火の精霊が襲ってくる」等の、なぜそこにいるのか良く分からない生き物を敵として出すのは非常に不自然です。
 またギミックがある戦闘、そしてそのギミックの存在が戦闘前に隠されている場合は、どの程度そのギミックについての描写をするのかは難しい問題でしょう。「部屋の中の戦闘で、『突然突風が吹き押し返される』場合、戦闘前にも『この部屋では、風音が鳴り響いている』」ぐらいの描写があることが望ましいと思います。
 これを利用して、ゲームバランスをその場で修正することもできます。つまり、上記の例だと、事前にそのような描写をしておいて、敵が強すぎたと思えば、敵に突風を当て、弱すぎたならば、PC達に突風を当てれば良いわけです。事前にそのような描写、「雰囲気」作りをしておくことで、このゲームバランスの補正を自然に行うことができます。もし、幸運なことに、この補正をしなくても良いならば、ただ描写が細かく雰囲気が良いエンカウントとなるわけです。
 ただ、「そもそもどこまで描写するのか」は「顔ペイント問題」という極一部で限られた有名な問題であり、議論する価値はありますが、ここでは触れないこととします。

 これまでのようなゲーム進行と関わる場合以外でも、一つ一つのエンカウントの情景、描写をきちんと説明することは、参加者のイメージの共有化につながり、深みのあるゲーム体験となります。言い方を変えると仮想世界にいる気分になれるので、私もそういう感じが良いです。
 また、戦闘以外のエンカウント「交渉や技能チャレンジの組み合わせ」エンカウントは、多くの場合、ただサイコロを振り続けることになりかねません。結果に応じた描写が必要です。おそらく、ここにも無数のノウハウがあるはずなのですが、ここでは触れないことにします。私も知りたいです。

次回予告

 さて、今回説明したような「雰囲気」がありますが、当然TRPGはGMとプレイヤーのやり取りの(言い方を帰ると「コミュ力を試される」)ゲームであるわけで、GMとしてはそれをプレイヤーに上手く伝える必要があります。実際にどのように伝えるのが良いのかについて述べたいと思います。